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札幌市便所3丁目
年が明けてちゃっかりひと月が経過しやがり、そして2月になったので書道でも始めようと思い立って文鎮を買いに出掛けたというのは嘘である。
我が恋の街札幌は現在、雪祭りというのを催して調子づいている。雪祭りというのは北海道という土地柄、余りに有り余った雪をさらにかき集めて雪の像をこしらえたろ、というイベントである。祭り会場の来場者らはそれらの雪の像を眺めて、ひゃあ、すごいね、大きいね、上手だね、寒いね、腹減ったね、おかわりしたいね、などと一同感激あるいは感動するのであるが、祭りといっても尻を出して踊るような、そういった激しい類の祭りではなく、尻を最後まで包み隠したまま終える、実に静かな祭りである。
僕はこの地元の大イベントともいえる雪祭りに二十年以上参加していない不届き者であるが、地元の人間ちゅうやつは大概「あんなものは観光客しか行かねぇダサい祭りだぜ」などというようなことを公然と嘯き、冷めた態度を取り繕うことで自己のアイデンティティを確保したがるものであって、人間ちゅうのは自分が不幸せだと楽しそうにしている人々に嫉妬し、その楽しげな宴を否定してみせることで逆に自己をアッピールしたがるのである。平たくいうと自分も注目されたいのである。しかし元来才能に乏しく、平たくいうと無能であることも手伝って、注目を浴びるための手段、方法というやつが実に惨めたらしいことこの上ないのであり、つまり世間の同情をひこうと思い企むのである。そういう奴というのは楽しげに「あはは、素敵な雪像ね、うふふ、かわゆい雪像ね、あはん」などと会話しあう幸福そうなカップルの脇に出没して「けっ、全員通り魔にでもあえばいいのに」などと呟いて卑屈めいてほくそ笑むのだから、もはや泣き顔も笑い顔も一緒である。このようないわば淋しさに耐えられない精神のくせに淋しい状況に甘んじている人間に、毎年この時期が訪れるたびによく出会うのだが、これらの輩はクリスマスには「俺は仏教徒だから関係ない」などと出家もしたこともないくせに嘯き、バレンタイン・デイには「俺は甘いの苦手だからメザシしか食わない」などと決まってひねくれるものである。何というか実に僻みっぽいことこの上ない。僕が聖母であれば彼らを抱擁してあげたいと思う。抱きしめてあげることで彼らの本音を引き出し、そしてきっと僕の胸の中で号泣するであろう彼らをさらに深く抱きしめてあげたいと思うのであるがしかし、残念ながら僕は聖母ではなくただ少し男前なだけの平凡な男なので、もし不意に彼らが淋しい胸の内を漏らし、涙の一滴でも垂らしたら爆笑するに違いないと思わないでもないのであるが、本当に爆笑したら近年続発しているあらゆる物騒な事件のように、この場合僕に笑われたことによって逆上した輩が僕のことを刺し殺したりしかねないのであり、だから爆笑はまずいだろうなぁ、と思いつつ実に治安が悪化し果てた母国を憂えるのである。南無。
ところで僕はというと、別段雪祭りは嫌いではない。どんどんやればよろしいと思ふ。しかし前途したようになして僕がもはや二十年余りという長期に渡って、ただの一度も雪祭りに参加を果たさずに自室で泡盛を呑みながらゴーヤを摘んでいたのかというとこれ、寒いのが苦手だからである。男のくせに婦女子よりも寒がりな、中世的な体感温度を持ち合わすナイーブな男なのである。あはん。冬になると自室に備え付けてあるガスストーブでは足りず、電気ストーブまで持ち出し、二台のストーブに挟まってゴーヤを摘むのである。そんなゴーヤ野朗が図に乗って氷点下の中雪祭りなどに繰り出したらとても寒さに耐えられないであろうことはどんな南国生まれの人間であってもわかるだろう。おまけに元来小便の近い僕は冬になるとますます近くなり、一日のおよそ6割程度は便所の中で暮らすことになるのである。そんな繊細な尿道の男が氷点下の中雪祭りに参加するのは、わざわざ公衆の面前で小便を漏らす姿を世間にアッピールしに行くようなものであり、そらこれまでの人生あらゆる種類の恥をかいてきたとはいえ、僕はその恥をかくことで得た数々の屈辱を頑張って乗り越えることによって人生の励み、そして自信にしたいと思っているのであって、何も小便を漏らす様を世間様に目撃されることによる屈辱に耐えうるための精神力の強さを蓄えるために恥をかいてきたのではないのである。だからわざわざ恥をかくことを知っておきながらむざむざと雪祭りに参加などしたくはないのであって、確かに多少自虐的傾向の強いところはあるが、それはあくまでも表現方法のようなものであって、ちゃんと場をわきまえているというか、そもそも世間に小便を漏らす様を表現したいわけでもなく、きちんと理性の働く男であるのだ、ということをこの場を借りて明記しておきたいのであるから明記したのであるが、しかし毎年この時期になると、こうした色々な理由から雪祭りを不参加している僕に「はすまろも雪祭り嫌いなんだよな?そうだよな、あんな祭り、観光客しか行かねぇよ、ダサいよ、猿だよ、イタチだよ」などと僕にひねくれた同情と共感を押し付けてくるような人間と出くわすのであるから便所を住所にしたくなるのである。彼らは勝手に誤解しているが、僕が雪祭りに行かないのにはきちんとした具体的な理由があるのであり、なにも自分の不幸を、楽しげに雪像を鑑賞する観光客に八つ当たりしているわけではないのである。それを奴らといったら自分自身の僻み根性を僕にまで拡大し、さも「はすまろも俺らと同じ人間なんだよ」とでも言わんばかりに、鼻の穴を膨らませて求愛してくるのだから僕はいっそ今年は、彼らの怨念から逃れて雪祭りに参加したろうかしらん、と企んでいるのであるがしかし、寒さに弱いゆえに毎年インフルエンザを患う僕は、昨年の暮れにもやはりインフルエンザを患う羽目になり、現在医者に薦められた漢方薬を日々飲んでいるのであるが、漢方薬というのは小便を近くさせる特徴があるのかどうか知らんが実際近くなった僕は、元来小便が近いくせに冬の寒さのせいでさらに近くなり、その上漢方薬による副作用で益々小便が近くなったこの身の上で、無事雪祭りに参加し、雪像鑑賞を果たすことが出来るのであろうか、という不安が心の前面に激しく芽生え、そうして不安になると不安が尿道を刺激するのかどうかは知らんが、不安になればなるほどまたさらに小便が近くなり、元来小便が近いくせに冬の寒さのせいでさらに近くなり、そのうえ漢方薬のせいで益々近くなった挙句不安が尿道を刺激し、またさらに小便が近くなったこの身の上で、僕は無事雪祭りに参加し、雪像を鑑賞して「うふん」などとうっとり出来るくらい心に余裕が持てるだろうか、ということを考えているうちに今まさに小便がしたくなったのでこの辺でよしとこ。かしこ
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by hasumaro | 2008-02-08 17:00 | エッセイ



爆発する愛と欲の言葉達
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