<   2008年 07月 ( 2 )   > この月の画像一覧
詩 その22

孤独な人


おれは今から嘘をつく
「おれは嘘をつかない」
おれは今から本当のことを言う
「本当は淋しい」
おれは孤独が好きだ
人間なんて大嫌いだ
誰かが野垂れ死にしてもおれには関係ねぇ
助けて欲しいと哀願すれば助けなくもないが
いちいち頼られるのは実に厄介なことだ
おれは一人で呑んで自分の分だけ銭を払う
割り勘が嫌いだからお前らとは呑みたくないんだ
祭りが始まれば家に帰るぜ
今夜のおかずは生はんぺん

あの娘はきっとおれを好きだろう
だっていっつもおれのことを見ているから
でも本当におれのことが好きなのかはわからない
「おれのこと好きなの?」って聞いて「何言ってんの?」って言われたら恥ずかしいから
おれはあの娘に直接聞けない
おれは今から嘘をつく
「おれはとっくにあなたが好きだ」
おれは今から本当の事を言う
「たぶん嫌われてはいないと思う」
でもおれは恋愛なんて面倒臭いことはやりたくない
できれば今すぐ情事を行い朝には別れたい
タクシー代やるからおれのことは忘れてくれ
おれを一人にしておくれよ
あなたの記憶の中には微塵も残りたくない
さっさと笑い話にしてくれりゃ随分気が楽だ
でもたまにおれのこと思い出したら電話をして下さい
出ないかもしれないけど
今夜のおかずはししゃも酒

暗い気分の時には明るい冗談話を聞きたい
気持ちに余裕のある日には悲しい物語を読みたい
部屋の中には安いソファ
中古のテーブルにおれは酒肴を用意する
粗酒を空コップに流し込み一息で飲み干せば孤独な夜の出来上がりだ
間接照明を灯し、天井の裸電球を消し落とす
テレビジョンの音はいらない
当然音楽なんて邪魔臭い
ただ一人で、部屋の中にわずかに入り込む外界の喧騒を聞きながら
今夜は一人で泣いてみたい
悲しい過去を思い出しながら後悔の念にかられたい
おれは今から嘘をつく
「嘘をついてごめんなさい」
ようやく涙が流れたというのに同時に漏れた屁のせいで
おれは直ちに涙をやめなくてはならなくなるのだ
慌てて間接照明を打ち消して裸電球を点けるころ
テレビジョンの画面には多勢にいじめ抜かれて悲鳴をあげる芸人の姿が映りこむ
おれは笑うのだ
この芸人の無様な姿を見て、ひと思いに笑うのだ
こいつは馬鹿だ
あいつも馬鹿だ
おれは阿呆だ
最後に淋しい部屋が出来上がる
とことん酔っ払ったおれは今から本当のことを言わせてもらう
「おれはカレーライスが食いたい」
今夜のおかずは、何もなし




(2008年 炎天)
[PR]
by hasumaro | 2008-07-29 12:57 |
詩 その21

まぬけ


馬鹿に馬鹿と言ったら怒るのである
阿呆に阿呆と言ったら怒るのである
ぼけにぼけと言ったら怒るのである
屑に屑と言ったら怒るのである
なぜならそれは馬鹿は自分を馬鹿だと思っていないし
阿呆は自分を阿呆と思っていないし
ぼけは自分をぼけと思っていないし
屑は自分を屑だと思っていないからなのだ
そしてお互い「おれは天才だ」と言い合うのだ
そう言われておれとお前はそれぞれ喜ぶのだ
ひとりになってにやにやするのだ
だけど顔を見合わせれば決まって喜びをこらえるのだ
それを馬鹿といい
それを阿呆といい
それをぼけといい
それこそを屑という
そしてお互い罵り合って、きっとおれとお前は殺しあうのだ
そうして個人という名の世間は殺人を犯し
人間という名の世界は戦争をやらかし
孤独という名の怨念が子孫に八つ当たりするのである
人類は愚かであった
まるでまぬけであった
愚かな歴史は我々にまぬけというものを生んだのだ
馬鹿や阿呆やぼけや屑らと同調することなく
また新たなまぬけというのを生み落として愚かな歴史を今刻み込んでいるのだ
馬鹿
阿呆
ぼけ

まぬけ
まぬけにまぬけと言ったら怒るのである
なぜならまぬけは自分を「特別なもの」だと思っているからである
それが神や悪魔ではないことだけははっきりしているが
わたしにはその正体はわからない





(2008年 晴天)
[PR]
by hasumaro | 2008-07-02 17:09 |



爆発する愛と欲の言葉達
by hasumaro
カテゴリ
全体
プロローグ
エッセイ

photo
repo

Link
tom waits
yohji yamamoto
nickey
nikorush
harakiri culture
bossa
larsen
以前の記事
2018年 02月
2017年 10月
2016年 12月
2015年 10月
2015年 07月
2015年 04月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 10月
2013年 07月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 10月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2011年 12月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 07月
2009年 05月
2009年 03月
2009年 02月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
検索
その他のジャンル
ファン