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ペプシ詩人
夏は暑い。当たり前である。
北海道に住んでいると「いいねぇ、涼しくて」などと舐めた口をききやがる愚か者が時折いるが、北海道といえども夏は暑く、昨今の地球規模の温暖化ちゅうのも手伝って、近年の夏はなおさら暑く感ずるのである。
僕は幼少の頃から炭酸ものが苦手で、ペプシコーラなどを飲んでほくそ笑んでいる餓鬼どもを見るに付け、ああいうのは大人になったら必ず肥満し、いずれ内臓脂肪というのが異常に発達し、己の心臓を圧迫させ、内部から自己を抹殺させるのだ、というようなことを心の奥底で呪っていたほど炭酸が遠回しにいうと苦手、直接的にいうと嫌いだったのであった。
しかし餓鬼の頃好きだった綿菓子が三十路を過ぎると食えなくなるように、僕もまた今の年齢に達した途端炭酸がいくらか飲めるようになったのであるからこれ人間ちゅう生き物は不思議である。というのは夏の糞暑さを潤す手段として現在では一丁前にビールちゅうものを嗜むまでに僕は大人になったのだ、などと近頃自らをいたく感心さえするのである。ちゃぽん。
しかし元来、幼少の頃の呪いのせいでビールちゅうのはあまり好きではない。なんちゅうか、しゅわしゅわしているし、飲むとかなりの確立でしゃっくりが出るし、僕の喉というか食道というか、肉体の内部のどっかがあのしゅわしゅわに合わないのだと思うのだけれどしかし、ひとたび夏になってぐわっと暑くなった途端「あら、ビール飲みたいな」などと思うのだから重ね重ね人間ちゅうのは不思議であるが、これも大人になった証であるわけで、大人というのはどこかでしゅわしゅわを求めるのではないか、などと考えるのであるがしかし、夏の暑さというのは人間の思考能力を低下へ追い込み、考えること自体が実に面倒臭くなって、その面倒臭いという気持ちが心を投げやりにさせ、人間ちゅうのはひとたび投げやりになると実に高い確率でビールを飲むものなのである。だから夏にビールが売れるのであり、政府もそこに狙いを定めてビールに税金を吹っ掛け、投げやりになった国民は政府の思惑に気づかずべろべろになって税金を支払い続け、国民は一斉に醜いビールっ腹に成り果て、かつてのペプシの呪いがビールを通じて災いという名の肥満を僕にもたらすのである。ぷたん。
しかしどうだろ。どまろ。炭酸というのは胃に溜まると一瞬にして満腹になるとは思わないか? 僕は思う。なぜなら夏場に図に乗って焼き鳥屋なんかに出向いてぽんぽちやらすずめやらを肴に頼んでビールを飲むと、一瞬で満腹に襲われた挙句ぽんぽちやらすずめやらがてんで喉を通らなくなる。しかし頼んじまったものだからもったいないなんつって食いたくもないのに無理っくりぽんぽちを食ってさらに満腹に襲われるのだがしかし、人間ちゅう生き物は果てしなく不思議なもので、ぽんぽちを一口食うと今度やっぱりビールも追加したくなるのであるから不思議を通り越して浅ましささえ覚える始末である。
お前は馬鹿だ。もう阿呆だ。とっくにまぬけだ。だったらビールだけ飲んで指でも齧ってろこの深爪野朗。あるいはぽんぽちのみ食って汗でも舐めてろこの酢昆布野朗。などと自己の存在を批判、もしくは否定したくなるここ最近。ちゅうのはそうしてビールとぽんぽちを繰り返しているうちに見事に肥えたではないか。僕は幼少の頃から夏場のでぶが遠回しに言うと苦手、直接的に言うと憎悪していた。絶対にペプシのやりすぎで醜く肥える大人にはなりたくない、と誓って生きてきたのである。それが今ではすっかりビールとぽんぽちにレイプされ、痛々しく惨めに肥えた無残でぶである。その姿がマゾヒスティックにさえ感ずる始末である。僕はこの肉を抱えて忸怩たる思いで今後の残暑を過ごすのだろうか。そしてやがてやってくる哀愁の秋に、もっとも哀愁とは程遠い肥満した影を、薄く痩せ落ちる悲しげな落ち葉の上にずっしりとずり落とすのだろうか。惨めだ。実に惨めである。僕は痩せないとあかん。なまらあかん。で、世俗の愚民どもがさんざん身銭を落として肉を喰らい、当たり前に肥えた肉体を今度さらなる身銭を落として減量する、平たくいうとダイエットという愚かなる行為を実行しなければいかん。あかん。なまら。そんで運動というものをやろうと思ったのだがしかし、元来運動嫌いな僕はどのような運動を具体的に実行したらいいのか思案してみたのであるがこれ、人間ちゅう動物は世の果てまで不思議な動物であり、こう糞暑いのが続きやがるとやっぱり思考能力ちゅうのが瞬く間に低下し果て、もう、何というか、考えることが面倒臭くなったのである。この場合の面倒臭さは運動をする、という当初の目的自体が面倒臭くなった、という意味を秘めており、その秘められた意味にこっそり気づいていた僕はそれに気づかないようにしながら「いやぁ、運動する時間って意外にないもんだよなぁ、忙しいし」などと元来晩酌をすることぐらいしか思いつかぬほど無趣味極まりない暇人の分際で一丁前に「忙しいし」などと口をついた自分自身に心の奥で呆れ果て、しかしその心の奥の思いに気づかぬように僕は「ま、ちょっとやったろかしらん」などと呟いて、この場合の「ちょっと」というのは明らかに妥協を意味しており、この明らかな意味を僕は瞬時に実行に移して腹をちょっと振ったり、首をちょっとひねったり、尻をちょっと撫でたりしてみたのだがこれ、全く運動というものに該当しない、酔っ払ったおっさんが気まぐれに踊った程度のものと成り果て、僕はただの一滴も汗をかくことなくそれから静かにソファに尻を落とし、窓辺の景色を静かに一人で見詰めたのである。
夕暮れであった。地面が赤く染まっていた。その上を人の影が伸びてゆく。斜陽。太陽がこの地上に生み落とす儚い風景。かつての詩人たちはこの夕日を見て何を思ったのだろうか。この美しい夕暮れが僕を詩人にさせる。この場合の詩人というのは紛れもなく現実逃避を意味する。僕はこの詩人の正体に気づかぬ振りしてビール。そして屁。かしこ
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by hasumaro | 2008-08-22 16:40 | エッセイ



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