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米なし海苔にぎり具は小指
今年の6月ももうすぐ終わる。6月の間僕という男は何をしていたのか。何もしていない、というより他はないのだから情けないことこの上ないのである。
そら何かしてた。飯を食ったりおかわりしたり、米が足りずに買いに出かけたり、毎朝決まって排便もした。しかし何もしていない、と思うのはなぜなのか。要するに充実感がないのである。おかわりや排便など、こんなものは日常の上で空気を吸うのと同じようなものでいちいち記憶に残ったり思い出に残ったりなどしない。例えば目標をこしらえて、それに向かって日々努力をする、あるいは目標を達成した、だとかそういうのが充実を感じさせてくれるのであって、僕の場合、この度の6月中にひとつもそのような充実がなかったのであって、だから「何もねぇ。なんもしてねぇ」などと嘆きつつ項垂れつつ昨夜のようにデリバリーのピッツァを食いすぎて消化不良に陥って早朝に便器を跨いで苦悶する羽目になるのである。めりん。
充実したい。充実を得るためにはまず目標を持たねばならん。目標などと藪から棒に言われたってそんなのいきなり持てねぇ。だからいきなりではなくってゆっくり考えることが大切。で、今ゆっくり考えているのだが、何も思いつかぬというのが率直な感想であり、しかし感想を率直に口に出してしまうとやる気を失いかねないので口に出さぬようにして心の奥底で無視をするのだけれども、実際僕という男は何を目標にすればいいのだろう。6月はもう終わるので間に合わない。だから7月から目標を持ちたい。7月から目標を持つということは6月中に目標を決定せねばならん。しかし6月は今日で終わる。僕は焦る。焦ると人間というのは良い結果を生まない、ということは歴史上あらゆる分野で立証されている。だから焦るわけにはいかぬが今日で終わる。焦ってはいけない気持ちと焦る気持ちが対決しあってますます気持ちの中に被害が広がる。つまりストレスというやつだと思う。ストレスを抱くとストレスを和らげねばならん気持ちが新たに生まれ、気分転換なんつって別のことを考えようとする。そうして昨今の韓流ブームについて考えてみたりするのだが、韓国の歌手なんかを見ていると歌も上手だし踊りも上手である。同時にどこか懐かしさを感ずる。顔立ちが懐かしいのか、ただ曲の調べが古臭いのか。だからといって僕の少年時代に活躍したキャンディーズという女性ボーカリストトリオがいたが、見比べるとやはりキャンディーズの方が古臭く、尚且つ懐かしい。なのになして昨今の韓流歌手に懐かしさを覚えるのか。話は脇へそれるが「なして」というのは北海道の方言で、標準語でいうところの「どうして」という意味である。なして僕はなしてを使うのかというと、別段北海道というのをアッピールしたいわけではなく、何というかちょっと語感が面白い感じがするからであって、それ以上の意味はない。そもそも韓流ブームというのに完全に乗り遅れた男が韓流ブームについて考えたところで結果無関係な方角に話がそれ、無意味な結末を迎えることになるということをこの度改めて実感するのであるが、肝心のストレスは和らいだのか。なんと和らいだのだから僕という男の底力を改めて自讃したいところである。
そうして全く目標が決まらぬうちに陽が登りきって昼に差し掛かった。昼といえば昼飯である。人間何もしていないと飯のことばかりが思いつく。何もしていないということは肉体を駆使していない、と言い換えることもできるのであって、つまり肉体が全く燃焼されていないくせに腹だけは減る。人間というのはどこまでも貪欲な生き物である。僕の昼飯は大抵外食だが、たまにコンビニエンスストアーで適当な惣菜を買って貪ることもある。なして大抵外食の上にたまにコンビニの惣菜を買うのか。外食に飽きるからである。外食というのは僕の経験上結構メニュウが限られていると思う。蕎麦、うどん、らーめん、定食、洋食などに限定され、その中から選択せざるを得ない。蕎麦やうどんやらーめんは具体的だが、定食の中身はというと大抵が焼き魚及び煮魚、あるいは肉、となり、気分によってそれらメインディッシュを選択することになる。洋食というのはハンバーグやとんかつ、あるいはスパゲッティなどがあって、同様こちらも気分によって選択することになるのだが、こうして考えると実にお品が豊富ではないか。結構なレパートリーである。しかしなしてメニュウが限られているように感ずるのか。たぶん口が卑しい、否、贅沢になっているのではないかと僕は推察する。外食に飽きるのは外食に慣れたからであって、だから不慣れなコンビニの惣菜を間に挟むことによって新鮮さを演出し、飽きた気持ちをコントロールしているのだろう。このように考えると人間というのはやはり重ね重ね貪欲である。で、僕は何を食いたいかというと、今日はあまり贅沢をせずにコンビニのおにぎりあたりにしてみようかしらん、と思う。なぜかというと、なんか、目標さえ未だ決まっていない分際で一丁前に昼飯のメニュウで悩んだり悔やんだりしている自分が些か浅ましく感ずるのである。やはりこれは目標をきちんと決めないといかんのではないか、という本音が心の奥底を這い出て肉体の表に出現しているような気がする。だからって目標なんつったってそんな藪から棒に。何も思いつかぬまま僕はとうとうコンビニエンスストアーに出向く羽目になるのであるからほんと困った胃袋である。
おにぎり。シーチキンのおにぎりを食っているのだけれども、目標も決められないくせに美味いではないか。目標も決められぬ情けない男のくせに実に満たされた思いがする。いっそ7月の目標を「おにぎりを食う」にしたら多分余裕で達成できるだろうね。しかしおにぎりが目標では何だか見栄えがよろしくないと思うのは気のせいではないと思う。もう少しなんかないか。おにぎり以外で。例えばそうだ、ダイエットとか、と呟きかけて咄嗟に口を閉ざしたのはすでに二つ目のおにぎりを食い始めていたからである。そして厄介なことにこのおにぎりが美味いのである。鮭の切り身が内蔵されたおにぎりなのだが、鮭というやつはほんと米に良く合う。実に感心。いっそ「おにぎり研究」を目標にして、鮭以上に合う具の開発をしてみたろかしらん。開発、という言葉の響きは実に心地よい。そして見栄えがよろしいではないか。むほほん。僕は7月からおにぎり研究者として生きることにしよう。
そうしておにぎり研究者として初めて自宅に帰った僕は、おにぎり研究者になったことを妻に告白しようか少し迷った。なぜに迷うのかというと、いざ告白しようとした途端何だかやっぱり「おにぎり研究者」という肩書きが少し格好悪く感じたからである。また同時にせっかく得た目標を格好悪く感ずる自分自身が薄情に感じ、おにぎりに対する罪悪めいた気持ちすら芽生えている。そもそも目標というのは人それぞれであって、出来ることからコツコツ始めることも大事なことなのだ。だからおにぎりを研究する者を馬鹿に出来る権利など誰も持ち合わせていないはずであり、ここは堂々と告白、否、宣言するべきである。おれは、おれは、7月からおにぎり研究者なのだと。
おにぎりを研究することを宣言できぬまま夕食の時間が訪れた。窓辺には夕焼けが僕を嘲笑うかのように赤くなっているのが見える。太陽が沈む。6月の最後の太陽が沈む。次の太陽が昇るころにはもう7月だ。僕は明日、おにぎり研究者となって新たな朝日を浴びることができるのだろうか。たぶんできないだろうな。きっとできないだろうな。絶対できないだろうな。研究しないだろうな。おにぎりは食うだろうな。かしこ。
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by hasumaro | 2011-06-30 13:18 | エッセイ



爆発する愛と欲の言葉達
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