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静寂のもっこり
先日、図に乗って奈良県を観光した際、以前話題になっていたせんとくんなるキャラクター人形を目撃した。
このキャラクターを巡って奈良では「気色悪い」だの「気持ち悪い」だのと随分批判があったようである。実際見ると、人形の中に入っている人はきっと役場かどこかのおっさんなのだろう、足元がふらついて疲労を感じさせる仕草で懸命に観光パンフレットを配ってる様子を見る限り、批判のようなことを抱く以前に同情を抱いてしまったのであるが、特段気色も気持ちも悪くはなかったと思うのである。結構いけてたんじゃないかなぁと僕は思っている。
北海道にもこのような所謂ご当地キャラクターなるものが多数存在している。その中でも極めて異色なのが「まりもっこり」というキャラクターで、道東地方の阿寒という観光地に、湖の中に生息するまりもという苔の塊のような生物がいるのだけれども、どうやらそれを人間のような姿に見立ててキャラクターに仕立て上げ、その挙句陰茎を膨らませて強調させ「まりも」と陰茎の「もっこり」を掛け合わせて「まりもっこり」とネーミングしたという実に卑猥かつ淫猥なキャラクターなのである。
こういうキャラクターの企画というのはだいたいが役場の観光課辺りのうらぶれたおっさんが担当するもので、おっさんというのは長い間おっさんとして生活してきたがために若者の流行というものに実に疎い。加えてきちんと流行を勉強せずにヤマ勘のようなものに頼るから若者にさえ失笑されるようなことをやらかしてしまうのである。ここがおっさんの浅はかたるゆえんであるが、役場というのは不思議なことにこのような浅はかな企画が割りとすんなり通ってしまうところなのだろう。重ね重ね失笑するのである。
まりもっこりなどというネーミングセンスを見るにつけ、例えばすすきののスナックあたりでホステス相手に「もう一杯呑みてぇなぁ、おっぱいは揉むけどね。げははは」などという実に冷えきった上に凍てついた下ネタのレベルと変わらない。付き合ってくれるのは仕事と割り切ったホステスくらいのもので、自宅でうかつに口を滑らすと妻に愛想をつかされ娘を連れて実家に帰られるくらい人格を軽蔑される恐れすらある。しかしまりもっこりは企画を通りこの世に具体化され、すでにキャラクターグッズすら販売されている。しかも割りと売れている、という噂さえ耳にする。そもそも陰茎をもっこりさせる、といういわば悪ノリが御老人らに喜ばれるはずはない。従ってターゲットは当初からの狙い通り若者であるはずであり、つまり若者がまりもっこりのキャラクターグッズを購入している、という事実がこの世に存在するということになる。なして田舎のおっさんの浅知恵が若者にうけたのだろうか。実に疑問であるが、この疑問を追及した挙句「まろもっこり」などと言って自らの陰茎をもっこりさせて街中をうろつくと逮捕される恐れがあることからこの疑問は追及しないほうがいいと思う。
ご当地グルメなるものもちゃっかり流行っていて、日本各地の名産名物を食い物の中に落とし込んで人工的に新名物をこしらえて各々宣伝しているのである。北海道にも多々ご当地グルメが競うように出現し、所用で地方に行くとその地のご当地グルメの幟が道端ではためいているのをよく見る。なんたら焼き蕎麦だのなんたらどんぶりだの美味そうなものから不味そうなものまで色々と取り揃えられており、例えばタコをから揚げにしたものを飯の上に乗せてなんたらタコどんぶり、なんつうご当地グルメがあったが、僕に限ってはタコは刺身かタコしゃぶしゃぶがいいと思う。なにもわざわざから揚げにしてどんぶりにしなくてもいいのではないか知らん、と思うのだがしかし、スタンダードでは面白くないのがご当地グルメであって、ちょっとフェイントというか意外性がなければ注目されない、という心理が働くのだろう、先のまりもっこりしかり、ただまりもを人形にしたって丸いだけじゃん、だったらもっこりさせようぜ、なんつう論理でタコをから揚げにしたのである。食ったことがないから美味いか不味いか知らんが、今度食ってみたろ、と思って数年を経た今、そろそろ僕もご当地グルメデビュウの時期ではないのか。何を根拠にそろそろなのだろうか。
札幌は味噌ラーメンという絶対的地位を確立している名物がある。そのためかふんぞり返ってやたら高値の店もある。自惚れてビルヂングを建設して1階フロアを店舗にした挙句土産コーナーのような窓口さえ併設させやがり、今ではすっかり企業めいた店もある。実にうらやましい。味噌ラーメンだけでは満足せず、今度スープカレーなる新名物も出現し、こちらは知名度においてはやや低迷しており、全国の普及度ではラーメンを米に例えるならスープカレーはクスクス程度だろう。それでも札幌市内には100店舗以上存在するようで、僕のような歩行が不得手の人間にとっては店舗が多すぎて食べ歩いているうちに疲労しすぎて人生そのものが嫌になってしまい、カレーと同時に生命を諦めてしまう可能性があるので実に危険である。よく食べ歩きと称してちまちま料理の写真を撮ってしたり顔で感想をブログなどに記載している素人がいるが、おそらくああいう人らは長生きすると思う。
各地に名物を作って他方から観光に来てもらい収益を増やしたいがために日本人は頑張っている。確かに人間は無職でも腹が減る。住み慣れぬ土地に来ると気持ちが高揚して想定外の空腹を感じたり、自室にあると見向きもせぬ平凡なものにさえ「ややあ、とっても綺麗な白菜ですね」などと言ったりする。そうしてまりもっこりのような猥褻で珍妙なものまでがどさくさ紛れに売れるのである。人間の心というのは六畳一間でじっとしていると壁紙にさえ馬鹿にされているような気持ちに陥ったりするが、そこを出て見知らぬ土地へ行くとそこにある六畳一間がオアシスになったりする。僕などは自室にいると毎朝快便だが、地方に出向くと便秘になる。どういうことなのか。尻にも何らかの影響があるのだろうか。尻というのはたぶん脳味噌よりもデリケートなのだと思う。慣れた便座と慣れぬ便座では尻の位置に違和感が生じて便の噴出に影響するのか、否、きっと便に至るまでの消化の過程で問題が生じるのだと思われる。そうしてえんこになれぬまま尻の手前で固体化して、所謂便秘という実に悩ましい事態になるのである。しりもっこりである。
「僕はまろもっこり改め、しりもっこりだ」と言ったどころで誰も笑わないことは知っていた。先に記したとおりこんなものは失笑を誘うだけである。でも言ってしまったのであるからもう引っ込みはつかない。くすりともせぬ妻を尻目にジャックダニエル・ハイボールを呑みながら凍てついた沈黙に耐えていると、ふとあることに気づいた。お酒で酔っ払うということは心と脳味噌が旅をしているようなものではないだろうか。つまり、ここは自室で地方ではない。でもせめて心と脳味噌くらいは旅してみたい。そうした時に人はお酒を呑んで酔っ払うのではないか。酔うということは非現実に近づくということで、これを旅に例えたとしても間違いではないと僕は思う。そう、僕は今、ジャックダニエル・ハイボールで酔っている。つまり旅行中なのだ。だから気分が高揚してついついもっこりもっこり言ってしまった。おっさんだからもっこり言ったのではないのだ。というようなことを思いついて妻に言おうとしたらすでに妻は寝室で寝ていた。一人リビングに取り残された僕。一人旅というのはこんなにも淋しいものなのか。早く家に帰りたい。人の温もりに触れたい。出来れば迎えに来て欲しい。ここで待っているから。ずっと待っているから。永遠に待っているから。かしこ。
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by hasumaro | 2011-07-26 16:26 | エッセイ



爆発する愛と欲の言葉達
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