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脳味噌は記憶の焼け跡
子供の頃というのはホラを吹くと途端にばれたものであるが、大人になるとばれぬように用心し、ひとつのホラを吹くために次のホラを用意するものである。しかし長く大人をしていると次のホラを吹くとその前に吹いたホラを忘れるようになる。精神がいやらしく育った人間はそこをいやらしく突っついてきて「はすまろはホラ吹きだ。そして嘘吐きだ。実に残念な人間だ」などと僕という男の半生を否定するのであるからやはりホラはばれたくない。
以前吹いたホラを忘れてしまうのは簡単に言うと記憶力の問題であり、つまるところ近頃の僕はこの記憶力というのが著しく低下していやがるのである。なして低下したのかしらん。年齢的なことによるものが僕の脳味噌に悪影響を及ぼしている、というのが狭い世間では一般的な意見であるようだがしかし僕は違うと思っている。
なにが違うというのかしらん。それは人間ちゅうものはそもそも同時に色んなことをこなせない。せいぜい尻をかきながら鼻を掘るくらいしか出来ない、と僕は思っている。それを図に乗ってみっつよっつとやろうとしやがるものだからひとつ前のことすら忘れてしまうのである、というのが僕の見解である。
「メモをとればいいじゃん」という意見もあることはある。あることはあるが逆に僕は問いたい。日常の中であらゆることをメモ帳に記録できるのか、と。そんなことをしたらこれ、年間何百冊のメモ帳が必要になるというのか。「くさい」といわれて「おれじゃない」と答えた僕のホラをいちいち記録していたらおならの数だけメモ帳が増えることになるではないか。僕は一体何冊の屁を記録する羽目になるというのだ。そして何発の屁を放てばいいというのだろうか。実に不経済だし、屁で破産したとなれば先祖に勘当される。僕は今更勘当されたくない。勘当されたくない為に僕はただひとつの答えをとうとう導き出したのである。つまり「ふたつのことしかやらん」。
ふたつのこと。尻と鼻。みっつめは無視するのである。そうして無視をして数日を経た現在、至極重要なことに気がついたのである。ふたつめすら忘れる、ということである。これすなわちひとつしかやれん、ということになる。僕はとうとうただひとつきりの人間に成り果てた。尻のみ。否、鼻のみ。どちらにせよ尻をかくのが精一杯で、鼻は糞が溜まっても溢れ放題である。実に薄汚い男である。せめてふたつめから始めたい。要するに尻の痒みに耐えて先に鼻の糞を掘りたい。優先順位というやつか。尻が痒い場合は先に鼻を掘り終えてから尻をかく。そうすると同時にやらんくて良い。尻をかいているうちに鼻を忘れ糞まみれにならなくて良い。そうして真人間になれるのだ。ということに気づいたのだけれども、そもそもホラを吹くのがいけないのではないのだろうか?という至極根本的な疑問が脳内に浮かび上がるのは気のせいだろうか?気のせいのはずがない。だってその通りなのだから。だったら直ちにホラをよせばすべてが済むのである。そもそも僕はなしてホラを吹くのだろうか。たぶん、現実に面白味がないために面白味を演出しようとしているのだと思ふ。だったら現実こそを面白くせんといけないよっ、ってことで現実を面白くする方がそれこそ優先順位としては先にやらなければいけぬことなのだよっ、ってことでなるほど納得した僕はまず、逆説的になして現実に面白味がないのかということを考えてみた。例えば朝起きる。バナナを食う。歯を磨く。顔面を洗顔する。ヘアーを整える。着替える。靴を履く。ドアーを開ける。というのが毎朝の現実で、これは冷静に考えるととてつもなく面白味のない男の朝である。世の女性はこんな男とは通常結婚したくないはずである。しかし僕はちゃっかり既婚であり、平たく言わぬとも妻がいる。これでは妻が不幸ではないか。こんな面白味のない毎朝を真顔で過ごす男などどれだけ贔屓目にみてもつまらなく、何の御利益もない地蔵のようなものである。地蔵の妻。実に不幸ではないか。僕は妻を幸せにしたい。ハッピーにしたい。そんで、まず面白味のない毎朝を改善しようと企んだのであるが良いアイデアが閃かない。否、閃いたのである。確かに閃いたのであるがなんと忘れてしまったのである。こんな重要なことを、ともすれば夫婦生活もしくは僕の人生にとってものすごく大事なことを忘れるなんて何たることかっ。これはどうしよう、泣いたって思い出せないから泣かないが、何か思い出せる方法はないかしらん。全身を食い縛って考えたがない、方法がない。だったらまた新たなアイデアを考えなくてはならぬが、今しがたアイデアを忘れたばかりなので気持ちに焦りが芽生えている為か、脳味噌が先走って思考が出遅れている。従って何も思いつかない。これはいよいよ妻を不幸にする。僕はもう、最低の男だ。人間の屑だ。人類のケダモノだ。ぬあっ、と奇声を発した途端おなら。「お、おれじゃない」とホラ。「くさいけど、おならじゃない」とふたつめ。「おならだけど、おれではない」とみっつめ。よっつめが思いつかないうちにふたつめのおなら。もう止まらない。屁も止まらぬが涙も止まらない。僕のホラはそもそも屁のようなものなのか。屁とホラの違いは何だろう。嘘とホラの違いは何だろう。ヤフーの辞書によれば、ホラとは大袈裟に言うこと、でたらめをいうこと、とあり、嘘とは人を騙すこと、とある。僕は屁というでたらめで妻を騙す最低の鼻糞野朗だ、と思った。思ったのだがしかし、何だか大袈裟だなーとも思った。たかだか屁やホラ如きで妻を不幸にするだなんて、そりゃあなた大袈裟すぎやしませんか?即ち気にしすぎじゃないかしらん。あまりくよくよ気にしちゃいかんのでは?だから面白味がないのではないですか? そ。そそ。気にしないで、むしろあえて忘れてしまおうかな?そうだ、全部忘れてしまおう。と心を新たに、即ち心機一転し僕は全部を忘れて生きてみよう、と思った瞬間おなら。たぶんみっつめ。匂いが長く残った。なかなか消えなかった。僕は「おれじゃないけどね」というような表情を顔面で作り匂いを無視したが、匂いが僕を無視しなかった。匂いが僕を忘れなかった。そうして僕は忘れることを忘れ、匂いの根拠、即ち昨夜の飯のおかずを思い出そうとしたのであるが当然思い出せないのである。もわぁん。かしこ。
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by hasumaro | 2012-05-31 14:33 | エッセイ



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